【コラム】AI社会の仕組み変化を見据えた投資が必要だ

投資とAI

近年、「付加価値の低い仕事」は人工知能に代替されると多方面から指摘されています。野村総研とオックスフォード大学が行った調査によれば、日本の労働人口の49%が人工知能で代替可能とさえ指摘されています。しかし「仕事を機械でも代替できる」ということと、「その仕事の価値がなくなる」ことはイコールでしょうか。

この手の調査で必ず例として挙がるのは「自動運転車とタクシー運転手」です。自動運転車の開発・製造を目指すベンチャー企業である米Waymo社は、自動運転実験走行をいまや1,200万kmも実施しています。遅かれ早かれ、日本でも自動運転車が一般道路を走り出すのは確実でしょう。このことを否定するつもりはありませんが、しかし自動運転車が普及することは、タクシー運転手が価値をなくすこととイコールなのでしょうか。

例えば、東京都内で自動運転タクシーが実用化(都外含む長距離はまだ不可)した近未来の変化を考えてみましょう。自動運転タクシーは人件費がかかりませんし、料金は非常に安価になるでしょう。極端な話、車内広告の収益と相殺して無料で運用できるかもしれません。このようなタクシーが走行を始めたら、人々の生活はどんな変化をむかえるでしょうか?

まず、これまで電車通勤していた人たちが利用を始めるのではないでしょうか。タクシーが安価ならば、わざわざ満員電車にゆられる必要などないからです。座席が確保されたタクシーの方がよほど快適です。近県からの長距離通勤者も、乗り換えが面倒な場合は最後の数駅分をタクシーに乗るのではないでしょうか。

すると今度はどうなるでしょうか。自動運転タクシーの需要は高まり、都内ではタクシー争奪戦が繰り広げられることになると思います。タクシー乗り場は長蛇の列となり、流しの自動走行タクシーをつかまえられる確率はとても低くなるでしょう。そうなれば、元々お金を払ってタクシーに乗っていた顧客は「これまでと同じ金額を払うから、並ばずすぐにタクシーに乗りたい」と思うのではないでしょうか。また「急ぎ」というタクシー利用のニーズを考えるなら、杓子定規の自動運転車でなく、実際の道路状況を見て「裏道を通って」「信号変わっちゃったからこっちに」等の細かい要望にこれまで通り聞いてほしいと考えるのではないでしょうか。

23区内の人口は約950万人であり、職住近接の志向もあって23区の人口は流入超過が続いています。国土交通省関東地方整備局の調査によれば、既に433箇所の主要渋滞箇所が存在していますが、安価な自動走行タクシーの普及はいっそう渋滞に拍車をかけるでしょう。するとたとえ高価でも、柔軟な運転対応ができて混雑を避ける運転手付きタクシーは付加価値を持つのではないでしょうか。自動運転車の登場によって価値を減じるのは短距離の地下鉄やバスであって、タクシーではない可能性があります。

世にあるレポートの「なくなる仕事」に入っていても、価値を高められる仕事はあると思います。上記のタクシー運転手であれば、自動運転車の普及による人々のライフスタイルの変化を見越して、自動運転車対応外の"裏道"を専門にすることで価値が高まるかもしれません。投資家や企業は、単純に技術が人を代替すると考えず、技術がライフスタイルを変化させた結果どのような社会になるのかを予測し、健全な活動を継続して頂きたいですね。

それでは、また。

価格とは、何かを買うときに支払うもの。価値とは、何かを買うときに手に入れるもの。
ウォーレン・バフェット

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