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2022年07月13日 価値創造

グリーン・トランスフォーメーションとはなにか?

近年、グリーン・トランスフォーメーション(GX)という言葉をよく耳にするようになりました。2022年現在、日本政府も岸田内閣の”骨太の方針”の中で、GXへの投資を5つの重点投資の1つとして掲げています。

 

各企業のマーケティング部門・研究開発部門では、GX分野での新事業立ち上げを検討せよと大号令がかかっています。しかし担当者の中には「今さら環境ビジネス?20年前に終わった話を、なぜいま持ち出すのか?」と疑問に思っている方もいるのではないでしょうか。また、”環境ビジネスは儲からない”というイメージが浸透するあまり、”補助金だよりのCSR的取り組み”という思考から脱却できていない担当者も多いのではないでしょうか。

 

しかし、いまのGXは過去のそれから議論が進歩し、むしろ経済的・産業的な意味を強く持っています。本記事では、当団体の有料ウェビナー「グリーン・トランスフォーメーションとイノベーション戦略」開催に先駆け、GXの今について、代表的なキーワードを解説していきます。

GX(グリーン・トランスフォーメーション)とは

そもそもGXとは、経済産業省『GXリーグ基本構想』の定義に従えば、「2050年カーボンニュートラルや、2030年の国としての温室効果ガス排出削減目標の達成に向けた取組を経済の成長の機会と捉え、排出削減と産業競争力の向上の実現に向けて、経済社会システム全体の変革がGX」ということになります。

温室効果ガスの排出削減という目標そのものは、20年前から変化はありません。ただし過去の取り組みとの大きな違いは、「経済の成長の機会と捉え」「産業競争力の向上の実現」を目指すと明記されている点にあります。
そもそもGXリーグ基本構想の動機は、出発点を社会正義としていた過去の環境政策と根本的に異なります。GXリーグ基本構想の出発点は「環境に対する日本企業の努力を正当に評価し、欧州初のデファクト基準を受け入れるだけでなく、日本から市場創出を行うこと」であり、環境省ではなく経済産業省に設置されていることも特徴的です。

日本におけるGX関連施策

ここでは、近年議論がなされているGX関連施策について、代表的なものを紹介しましょう。

サプライチェーン排出量の算出

伝統的に"脱炭素"の文脈は、製造時の省エネや3R(リデュース・リユース・リサイクル)のようなゴミの削減/資源化が対象となることが多い文脈でした。(≒カーボンニュートラルのSCOPE1&2)
しかし、実際の企業活動によって排出されるGHG(グリーン・ハウス・ガス:二酸化炭素も含む、温暖化効果を持つガスの総称)を計測すると、そのほとんどが、原料調達や運搬/流通、製品利用時に排出されるということがわかってきました。SCOPE1や2でCO2の削減努力を続けても、全体のパイからすると限られた効果しか得られないということが具体的に示され始めたのです。

そこで近年では、企業の排出量を計測するにあたってはサプライチェーン全体を計測することとし、またサプライチェーン全体にその企業が責任を持つことが期待されています。(≒カーボンニュートラルのSCOPE3)

米国の環境シンクタンクWRI(世界資源研究所)は、企業のバリューチェーンにおける排出量の算定や報告の方法を示す「GHG プロトコルScope3算定報告基準(Corporate Value Chain (Scope3) Accounting and Reporting Standard)」を策定しており、ISO(国際標準化機構)でも環境マネジメントシステム規格であるISO14001において、ライフサイクルの視点を考慮することが2015年の改正で加えられました。

こうした流れも受けて、我が国でも環境省および経済産業省にある「グリーン・バリューチェーンプラットフォーム」にて、サプライチェーン排出量算定の手引きが示されています。

改正地球温暖化対策推進法

上記のように企業活動におけるGHG排出量の算定が広範囲に及ぶようになると、各企業間のデータ連携も重要となってきます。取引のある企業は相互にサプライチェーンの一部であり、中間生成物のGHG排出情報の提供などの協力が不可欠になっていくためです。

これまでもGHGを大量排出する大手企業はその報告が義務付けられていましたが、その報告は紙媒体を中心に行われていたため、集計に年単位を要していました。これではGHG視点で企業活動を円滑にサポートできているとはいえません。

そこで2022年4月に施行された「改正地球温暖化対策推進法」では、報告の原則デジタル化と、公表までの時間短縮、データ利用の利便性向上を定めました。各企業のGHG排出量はこれまで以上に透明化され、市民の検証にもさらされることになります。

また直接的に明記されているわけではありませんが、こうしたオープンデータ化 / デジタル化による利活用にはもちろん、DX(デジタル・トランスフォーメーション)の取り組みが不可欠です。また、そもそも広範囲の企業活動におけるデータの収集にもシステム化が必要になります。GXの実行のためには、DXの取り組みは不可分なのです。

J-クレジット

2022年現在、EU-ETSや中国の全国統一炭素排出権取引市場を代表として、排出権取引市場では日々クレジットの売買が行われています。EU-ETSは対象が拡大し続けており、2021年末の価格は1トン=80ユーロ強と、2020年末から2倍以上に高騰*しています。

日本国内市場をビジネスの中心にすえているとクレジット売買の収益力を実感しにくいかもしれませんが、この価格水準の高騰は十分にビジネスの柱の1つとなりえるものです。実際、テスラモーターズの業績はクレジット売買が下支えしており、2021年1~3月期まで、クレジット売買収益を差し引くとずっと赤字が続く状態**でした。

クレジット売買での収益は、環境ビジネスを実施する企業に資金的な自由度を与え、イノベーションを加速させることができます。我が国でも類似の制度を整備すべく、これまでの施策も統合しながら整備されてきたのがJ-クレジット制度です。ただし、執筆段階ではクレジットの買い手側に義務がないため、諸外国と比べてニーズも価格のモメンタムも弱いのが実情です。

*:ロイター通信 ロンドン『世界炭素市場、昨年取引額は過去最高8510億ドル』
**:日本経済新聞『テスラ最高益、排出枠取引への依存脱却 「本業」で稼ぐ北米』

GX経済移行国債

上記のように、我が国ではまだ排出権取引市場が十分に成熟しているとは言えません。しかしこれは、我が国の環境関連企業が資金調達面で不利を強いられるということを意味しています。そこで環境ビジネスに取り組む企業が金融市場から資金調達できるよう、いわば排出権取引市場が成熟するまでの”つなぎ”の1つとして検討されているのが「GX経済移行国債」です。

とりわけ環境負荷の高いプラント系産業では、業態を転換するにも多額の初期投資が必要になります。GX経済移行国債はこうした資金調達を支援するためのものであり、類似の思考のグリーン国債は、英・仏・独をはじめ諸外国で既に実績があります。

そもそもの財源や、税金がリスクを負担するに適切な事業は何かなど、議論すべきことは多々残りますが、企業としてはこうした資金調達の方法が政府内で議論されているという事実が重視されるべきことではあります。

第二次グリーンテック・ブームとGXの企業への影響

ここまで見てきたように、政府としても「環境技術を向上させた企業が、これを付加価値として正当な報酬を得られる」市場を構築できるよう、様々な施策を整備しつつあります。こうした取り組みや、前述の排出権取引市場の価格上昇モメンタム、技術革新によるビジネスモデルの多様化など、様々な要素が作用したことで、2021年から再び環境テックに資金が集まりだしています

2000年代、アル・ゴア元米副大統領の「不都合な真実」がベストセラーとなっていた時代、金融市場でも環境バブルが発生していました。しかしリーマン・ショックによる投資の冷え込みなどもきっかけとして、2000年代後半にはすでに環境バブルは弾けていました。以降、今日に至る15年ほど環境テックへの投資は停滞を続け、この時代に冒頭の「環境ビジネスは儲からない」というイメージがすっかり定着してしまったように思います。

また、第一次グリーンテック・バブルの際は、結局のところPV・EV・LiBにほとんどの投資が集中していたように思います。そのいずれも「本質的にコモディティなモノ売りビジネス」であり、中国政府の大規模な資金投下や石油価格など「市場原理が容易に歪む外的リスクを抱えたビジネス」でもありました。

過去の投資傾向の反省から、いまの第二次グリーンテック・ブームでは、より多様な産業へと投資が集まっています。エネルギー・化学・鉄鋼といった産業は、GHGの大量排出産業であることから、これらの産業を無視することはできませんが、こうした「装置産業 / 巨大製造業」以外にもビジネスの裾野が広がったことで、過去と比べ投資としての健全性は改善しているといえるのではないでしょうか。

単純なモノ売りから、「排出権取引市場 × 多様な資金調達方法 × プラットフォーム型ビジネス × AI/DXなどのアプリ/SWを用いたストック型ビジネス」といった要素を加えた複合的なビジネスモデルに進化することで、投資先として環境ビジネスの魅力度は上がっているのです。

有料ウェビナー「グリーン・トランスフォーメーションとイノベーション戦略」のご案内

さらに詳しい情報やご関心を抱いて頂けましたら、ぜひ当団主催のウェビナーにもご参加をご検討いただければ幸いです。

= 開催概要 =
開催日:2022年7月27日(水)13:00~15:00
参加料:6,000円(税込6,600円)
お申込みページ:https://gx-innovation-strategy.peatix.com/
参加定員:500名
視聴方法:ZOOMウェビナーにて開催いたします。お申し込み後、参加URLよりご参加ください。
主催:一般社団法人 新技術応用推進基盤

※イベント告知企業Peatix様のページよりお申込みできます。
※お申込み後に表示される事前登録URLから参加登録をお願いします。参加登録後、ZOOMより当日参加用URLがご登録メールアドレス宛に送信されます。
※当日ご参加者様都合による欠席の場合、ご返金やアーカイブ配信はございません。予めご了承ください。
※当日の録画・録音等は禁止となっております。
※ZOOMの操作方法にご不安がある場合は、予めZOOM社のページよりご確認ください。

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一般社団法人 新技術応用推進基盤

編集部

一般社団法人 新技術応用推進基盤では、人工知能(AI)をはじめとするデジタル技術や、企業の経営改革、新規事業の立ち上げなどにお役立ていただける情報発信を行っております。


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