Open AIとは何者か?チャットGPTで注目された業界の風雲児の歴史と現在を解説
Chat GPT(GPT3.5、GPT4)が注目され、その提供団体であるOpen AIにも注目が集まっています。ここではOpen AIの歴史や成り立ちについて紹介したいと思います。
目次
Open AIとは? ー 団体の出発点 ー
Open AIは2015年に非営利の研究団体として設立されました。設立当初のOpen AIは、例えばGitHubのようなエンジニアコミュニティの色合いが強く、実際、GitHub のコーディング提案ツール CoPilot を強化する CodexAIを提供したりしています。またビデオゲーム向けのAIトレーニングツールを提供するなど、初期は団体として活動を試行錯誤していたような印象があります。
しかし、他のコミュニティと大きく違ったところは、設立当初に大きなスポンサードを受けて体力があったことと、2018年4月のOpenAI憲章によってコミュニティとしての目的を明確化したことでしょう。
Open AIは10名の著名なコンピュータサイエンティスト達によって設立されましたが、初期取締役はイーロン・マスクとサム・アルトマンという著名な2名の投資家であり、加えてAWS(Amazon)やビジネスコンサルティングのInfosys Limited、スタートアップ投資のY Combinator(当時はサム氏が代表)などが合計10億ドル以上の資金を提供して母体としました。
イーロン・マスクについては説明不要でしょうが、日本ではサム・アルトマンはそこまで著名ではないかもしれません。しかし、DropboxやAirbnb、Stripeに投資してきた人物だといえば、イメージがつくのではないでしょうか。こうしたコミュニティとしては設立段階でかなり強力なスポンサードを受けており、初期の試行錯誤を超えて成果を出すまで研究を継続できた理由の1つになっていると思います。
加えて、Open AIは2018年に自らの憲章をおこし、コミュニティの目的を「…汎用人工知能 (AGI)、つまり最も経済的に価値のある作業において人間を上回るパフォーマンスを発揮する高度に自律的なシステムによって、全人類に利益をもたらす」ことだと明言しています。同年に発表された論文「Improving Language Understanding by Generative Pre-Training」にて今につながるGPTの概念を提案して以降、この汎用AIを作成するという方向に全体の舵を切り、目的意識が明確な団体となりました。
営利企業の設立とOpen AIの飛躍
2018年の論文「Improving Language Understanding by Generative Pre-Training」で示されたモデルGPT-1は、7,000冊ほどの出版/未出版の本を学習させた最初の言語モデルです。その後、GPT-2では800 万の Web ページによる学習でアップデートしています。
このころ、Open AIは、その団体の名称に反してGPT-2を非公開化しています。現在、チャットGPTに懸念が集まっているように、フェイクニュースや詐欺メールの作成といった使われ方をされることを懸念したためです。一方で、商業的利用を模索し始めたのもこの時期であり、2019年には営利法人であるOpenAI LPを子会社として設立しています。
商業的成功を模索し始めた中で、彼らが最初に世界の注目を集めたのは2021年のAI「DALL-E」のリリースです。
ピクサー社のアニメーション映画ウォーリー(Wall-e)と芸術家ダリの名前をもじって名付けられたこのAIは、いわゆるText to imageと呼ばれる、いくつかのテキストから連想される画像を自動生成するもので、この分野の品質を大きく改善させました。
それまでText to imageの処理をするには、ディープラーニングの1つであるRNN(リカレントニューラルネットワーク)を利用するのが一般的でした。2015年の論文「alignDRAW」では、テキストエンコーダと画像生成器の両方をRNNで作成するやり方が提案されており、これを強化学習的手法で改善していくのが当時のデファクトでした。しかしDALL-EはGPT-2と同様のアーキテクチャで実装されており、RNNを使用していません。やり方の調整ではなく変更によって品質を大きく改善させたことは、世界のエンジニア達から大きな注目を集めたと思います。
チャットGPTのバズワード化と大ヒット
その後、2022年にはGPT-2の後継であるGPT-3を上市します。GPT-3 にはさらに45TB のテキスト データが供給されて学習されており、テキスト生成において驚異的なスピードを発揮しました。
またMicrosoft はGPT-3を実現するために、 285,000 個の CPU コアと 10,000 個の GPU を備えた OpenAI 用のスーパーコンピューターを設計して提供しているとされており、HW・SWの両面において注目を集める取り組みでした。
一般的には、このGPT-3上にチャットボットUIをのせた「チャットGPT」が2022年11月にリリースされたことで大きな知名度を得たといえるでしょう。いまやエンジニア界隈だけでなく、一般的な著名企業として地位を確立したといえるかと思います。チャットGPTに関しては、こちらの記事もご覧ください。
2022年11月のわずか4か月後にはGPT-4がリリースされており、Open AIによればGPT-4 は正確な応答を提供する可能性が 40% 高く、OpenAI のコンテンツ ポリシーに違反する出力を生成する可能性は 82% 低いそうです。このリリース速度は非常に速いと言え、今後、さらに進歩したAIの発表も期待されるところです。
おわりに
いま注目を集めるOpen AIについてその歴史を振り返りました。
新技術応用推進基盤では、Open AIのような海外のテックベンチャー調査やその評価支援等も行っています。ぜひ様々なスタートアップやテックベンチャーへの関心をお寄せ頂ければと思います。
その他、アドバイザリや市場調査、ウェビナーでの技術解説や講演等もご相談ください。
今後とも当団体の活動をよろしくお願いいたします。
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