チャットGPTとは?メリットとデメリット、産業応用の可能性について
2023年現在、チャットGPTの注目と普及が急速に進んでいます。ここではチャットGPTのメリット・デメリットや、産業利用について紹介したいと思います。
目次
チャットGPTとは?
チャットGPTとは、アメリカのOpenAIという団体から2022年11月に公開された、AIによるチャット応答システムです。
GPT(Generative Pre-trained Transformer)のバージョン3.5以降を一般にチャットGPTと呼び、2023年5月現在の最新版はGPT-4になります。従来と比べ、非常に自然でなめらかの文章での応答ができるということで、2023年現在、注目を集めているAIです。
開発元のOpen AIは、元々非営利団体として発足しましたが、現在は子会社に非公開会社を立てています。なおOpen AIの歴史と飛躍についてはこちらの記事もご参照ください。
Open AIへの期待はMicrosoftが特に強く、2019年には10億ドルの出資と引き換えにGPT-3の独占ライセンスを取得して以降パートナーシップを強めており、2023年1月には、今後複数年にわたって合計100億ドル(約1.3兆円)規模の投資を行うと報じられています。
チャットGPTは、文章を「生成」することから、生成系のAIと呼ばれています。
類似の製品としてはWritesonic社のChatsonicや、You.com(プライバシー重視をうたう検索エンジン)のYou Chatなどがあります。サービスとしてはほぼ同様のものですが、得手不得手などは少し異なっています。
チャットGPTは何が凄いのか?
チャットGPTの凄い点は、作成する文章の滑らかさにあります。
これまで文章の生成にはディープラーニングの一種であるRNN(リカレント・ニューラルネットワーク)が用いられていましたが、これだと文法的には正しくとも文意が不自然になったり、文章の前と後で矛盾した応答をしてきたりと、AIと人間の「対話」には難しさがありました。
チャットGPTは、こうした対話上の矛盾が劇的に改善しています。これらの矛盾はRNNを用いることで構造的に発生する問題であったので、RNNの活用をいったんあきらめたことがブレークスルーになりました。
元々、RNNの補助的機能として開発されていたAttentionという機能(文章全体の中で、今の話題としてはどこに注目すべきかを考える機能)に着目し、むしろRNNを使わずにAttentionだけで成り立たせる方向に舵を切ったことで、劇的に性能が向上したのです。
2017年に公開された「Attention is all you need(アテンションの利用がすべて)」という論文で示された、RNNを使わないモデルであるTransformerが現在のチャットGPTの原型になっています。Transformerの名前は、略語であるGPTのTに残っていますね。
一方で、チャットGPTのブレークスルーは文章作りの滑らかさにあるため、本当に正しい内容を回答できるかというのはまた別問題です。したがって、場合によっては、とても自然な文章で"嘘"を回答することもあるため、ある意味でよりやっかいです。文章自体は自然なため、本当らしくみえてしまって、間違いに気づけないリスクがあるからです。
最近、多くのお笑い芸人さんがチャットGPTの"珍解答"を面白がる動画をYou Tubeにあげていますが、成り立ちを考えれば、文章を自然に作る技術と、その内容が正しい技術はまた別であり、Transformerモデルだからといって「文脈は妥当でも回答が妥当とは限らない」ことはわかるかと思います。
↓ 「かまいたち」さんのチャットGPT動画 ↓
↓ 「ゴー☆ジャス」さんのチャットGPT動画 ↓
ビジネスパーソンがチャットGPTを使うことを考える際は、そもそもこれまでのバージョンと技術的に何が違う≒どのようにできることが変わったかを理解したうえで活用を考えることが必要になります。
チャットGPTのメリットとデメリット
チャットGPTのメリットは、大きく下記の点に集約されるのではないでしょうか。
- 1.汎用性高く、たいていの場面で自然な文章を作ることができる
- 2.プログラミングなど専門性の高い文章にも対応できる
- 3.インストールやセッティング不要、クラウドベースで利用可能
- 4.2023年5月現在無料でも利用可能、Plus(有料版)でも月額20ドルと安価
まず、汎用性の高さはこれまでになかったものです。これまでであれば、文章をある程度自然に保とうとすれば業界や自社なりの作りこみが必要でしたが、チャットGPTではこうした作りこみの必要がありません。また、文章だけでなくPythonやJava、C言語、VBAといったプログラミングのコードを書いてもらうこともでき、従来敷居が高いと思われた作業を楽にこなすことができるようになりました。
加えて、利用にあたってサーバーを用意したり、コマンドをたたいたりする必要もありません。エンジニアでなくとも気軽に利用でき、しかも月額20ドルという金額は中小企業でも十分利用に手が届く金額になっています。
一方で、チャットGPTにも以下のようなデメリットがあるでしょう。
- 1.回答の情報そのものは正確かわからない
- 2.学習データが最新とは限らない
- 3.チャットGPTそのものは自分で改変できない
いくら回答文章がなめらかでも、内容があっているかは別問題というのは前述のとおりです。加えて、チャットGPTがどこのデータをいつ学習しているのかは外部からではわからないため、最新のニュースといったものは学習していない可能性がありますし、いつ学習をするのかもわからないことも利用方法によってはデメリットとなるでしょう。
加えて、チャットGPTはAPIを通して自社のアプリ等に組み込むことはできますが、といってチャットGPT本体を何でもオリジナルにカスタマイズできるわけではありませんので、ある程度、ブラックボックス性はつきまとうことになります。
チャットGPTの産業利用とは?
ここまでの特徴をうまく活かすと、チャットGPTはどんなビジネスに活用できるのでしょうか。いくつか例をあげてみましょう。
従来のチャットボットの進化・発展
RPA(ロボティクス・プロセス・オートメーション)の流行と合わせ、チャットボットは簡易に導入できるようになり企業アプリやホームページに搭載されることは多くなりました。
しかし、従来のチャットボットは、事前に用意したシナリオを基に回答を表示していくものであり、その場で文章を作成しているわけではありません。したがって、想定シナリオ外の質問はすべてオペレーターにつなぐしかありませんし、実質としてはQ&AリストをチャットUIで表示するだけに近いものでした。
チャットGPTを活用すると、想定しないシナリオに対してもその場で文章を作成して対応できるようになる可能性があります。もちろん、情報の正確性の意味ですべてを回答できるようになるわけではありませんが、従来よりも自動応答可能な幅は広げることができるでしょう。
定型のやりとりの簡略化
日々の業務の中には、人が作業するとしてもコピペ文章でやりとりするような定型作業というものが存在します。例えば法務や経理などのバックオフィス業務で、毎月の定例的な申請作業や確認作業などがあるでしょう。こうしたものであれば、チャットGPTとRPAを組み合わせることで、完全な自動化を行うことができるようになる可能性があります。
また社会人であれば誰しも、新人の頃にビジネスメールの書き方を先輩に指導いただいた経験もあるのではないでしょうか。こうした文章の書き方についてはチャットGPTに任せてしまうということも考えられます。内容だけ指定して、適切なビジネスメールの文体を生成させるような使い方は、事務仕事の効率化にもつながるかと思います。
マニュアルや学習ツールの進歩
従来、業務マニュアルなどは膨大なページにのぼることがあり、「たしかに記載はあるかもしれないが、よくわかっている人に説明してもらわないと理解できない」というものもあったと思います。
このような場合、チャットGPTを利用することで、AIから内容を説明してもらったり、質問に回答してもらうことができるようになり、学習効率を大きく向上させることもできるようになるでしょう。
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